「……起こしてしまったかい? ごめんよ」

「あれ? 私、寝てた…?」

「おはようアナ。夢の国は楽しかった? そこから遥々我が国、シュサイラスアに戻って来てくれて嬉しいよ。ではこのまま寝室にご案内しよう」

 エテジアーナを腕に抱いたまま流れる様に額へと唇を落とすライオネル。
 途端に頬を染めながら怒り出すエテジアーナ。

「ちょ、ちょとレオ! もういいって! 寝てしまったのは悪かったわ! 下ろして!! 子供たちも見てるし…」

「駄目。そう、寝てしまったアナがいけないのだよ? ここでもっと色々しても良いのなら下ろすけど。……どうする?」

 整った顔を近づけられ色気たっぷりに囁かれたら誰もがのぼせてしまうであろう。
 それを分かっていてなお強引に迫るライオネル。

「うぐぐ……このまま寝室にご案内されます…」

「素直でよろしい。では諸君! 僕とアナはこれにて失礼するけども、ゆっくりと午後のひとときを楽しんでおくれ」

「あら、お父様たちこそごゆっくり」

先程のブラッドフォードの件のお返しだと言わんばかりにイリアーナがにっこりと微笑んだ。

「イ、イリアったら…! もう! ごめんね皆。アーちゃ、、アーサも。また皆で一緒にお茶しましょうね」

 早口でそう言い、恥ずかしそうにライオネルの首元にしがみつくエテジアーナ。
 ライオネルは満足気に笑みを浮かべ、エテジアーナを抱いたまま庭園の間から退室して行った。

「ひゅ〜! 強引〜!! 相変わらず陛下たちは熱々だな! 美男美女だし目の保養だぜ」

「お、おにいちゃんっ…! そんな失礼な言い方! 確かにお二人は素敵であこがれちゃうけど…」

「ふふふ、わたしもあんなふうになれるといいなぁ」

 頬を赤らめるリーナと、夢見心地なイリアーナとは対照的にラインアーサがひそりと呟いた。

「やった。母様、俺の名前ちゃんと呼んでくれた!」

「っ!? アーサはそこかよ! 全く…」

 ラインアーサの少しずれた喜びの言葉にジュリアンもイリアーナも苦笑した。

「え? うん。出来る所から変えていかないと! という訳だし姉様も俺の事ちゃんと名前で呼んでよね?」

「ええ。わかったわ! アーちゃ…あ!」

「もう! 姉様ってば!」

「す、すぐには難しくってよ? 徐々に……ね?」

「本当? 絶対だからね! そもそも俺の名前はラインアーサなのに! 何で皆愛称ばっかり…」