「今、お父様が日本にいて、帰って来るようには言われてたの」


あぁ、アヤノの親父は外交官だっけ。


「私が結婚したらもう一緒に住めないから、その間だけでもって」

「嫁、いくの?」

「い、いかないわよ!」

「行かないの?」

「え?何言って、……?」

「俺のところに、」

「何、またそんな……」

「離さないって言ったよね?」

「……」

「ミレイ、返事は?」

「そんな言い方って、」


そう言ったきり、うつむいたままのアヤノ。

やっと捕まえたのに、離せるわけがない。


「たくさん、遠回りしちゃってゴメンね。でももう無理だから、ずっとそばにいて?お嫁に来てくれる?」


「神代くんの、バカ――」

「うん、知ってる」


隣でシーツにくるまったままのアヤノ。
出来ることならこのままずっといたい。


「……ずっと離さないって約束してくれるなら」


下を向いたまま、小さな声で呟くように言ったアヤノに、


「誓うよ、10年分の想いと共に、これからもずっとその想いを重ねていくよ」

「10年て……すごいよね」

「だろ?」

「私はまだそれには届かないけど……」

「はは…」

「でも、その分たくさんあげるから」


今度はきちんとこちらを向いてそんな風に宣言してくれた。