「あ、そういえば朔也。アヤノ、イタリアの……」


その後は全く聞こえてこなかった。


アヤノがイタリアに留学していたなんて話は初めて聞いた。

いや、聞こうと思えば聞けたのかもしれない。

考えてみれば俺はアヤノのほんの僅かな一面しか知らない。

誰かに聞くことで知るのではなく、自分で直接感じたアヤノしか知りたくなかった。

あれから三年以上経つというのに、少しも消えてはくれない。

付き合ったこともない、ただ文句を言われただけの女なのに


何で、今このタイミングで優太は言ったのか……


優太はあれ以来、何人かの彼女が出来た。

でも相変わらず研究が一番で、そんな優太についていけなくなった彼女たちは別れを選んだ。


やっぱり愛なんて一時の幻だ