「…ゆ、優愛…。」



「いやぁー!!優愛がぁっ!」


俺の右隣で泣きわめく優愛のお母さん。


その隣で優愛のお母さんの肩を、


支えるように持つ優愛のお父さん。


俺の左隣で静かに涙を溢す穂希。




…そして、…



「琥珀?…無理しなくていいんだぞ」


いつもは、うるさいくらいに暴れてて


どうしようもならないと思っていた俺の唯一の親友、



西崎龍が、珍しく真剣な表情で言うもんだから…



堪えていた涙が一気に溢れ出てくる。






なんで…っ




涙ぐむ俺の瞳にぼんやりと写る遺影写真。


写真の中、幸せそうに笑う…




優愛。



彼女はついさっき、



この世を去った。




電車ににひかれそうになっていた子供を助け、


自らを犠牲に…。なんて、



ほんっとに優愛らしい死に方だよな。







俺は、君の笑顔がずっと好きだった。


きっと、初めて会った時から好かれていたんだと思う。


皆が嫌がることを率先してやっていたり、


雑用を押し付けられても愚痴一つ溢さない。


感動屋で、情に熱くて、


人のことになるととにかく一生懸命。



そんな君が、




ずっと、ずっと、好きだった。




「なんでっ、なんで勝手に逝くんだよっ!」



"将来、中山くんのお嫁さんになるの!!"



「先に逝ったら…できないだろ」




まだ、まだたくさんやりたいことがあった。



18になったら車の免許をとって、


車を買って、


助手席には一番に君を乗せてドライブに行く。




初デートには君の大好きな遊園地に行って、


誕生日プレゼントには指輪を渡して、


きっとこれからも笑顔で俺に着いてきてくれるって。



これからもずっと、離れることはないって。


いつでも会えるって、



そう、思ってた…




けど、もう



君に、会えないの?







『中山くん、大好き!』



繰り返しリピートされる愛しい人の声。



その声に、返事をしてあげられなかった。