「ゼェ、ハァ、ハァ、ハァ…、あ、あれ…?!」

昇降口まで走ってきたものの、
肝心の中山くんがいないではないか。

え、ひょっとして、
ひょっとして、待ちくたびれて帰っちゃったとか!?

わーっ!あり得ない!
なんて失態してんの私!
自分から誘ったにも関わらず、
忘れてたなんてぇーーーー!
自分を恨む…。

靴を履き替え、はぁー。とため息をついて、
その場にしゃがみこんだ。

…あぁ、どうしよう。


「…遅い」

「へっ、!?わっ!!」

「10分以上。待ちくたびれたんだけど」

「ご、ごご、ごめんなさい!」


あ、あまりの衝撃にどもってしまった…。
だって、帰ったと思っていた中山くんが
今、今すぐ目の前にいるんだよ?

「ま、今回は多めに見てやるけど。
次は本気で帰るからな」

「う、うん!ありがと、ごめんねっ!!」

そんな私のお礼に特に何も返すことなく、
彼はそそくさと帰っていこうとするもんだから
その後ろをチョコチョコとついていく。

彼は、中山琥珀(なかやま こはく) くん。

とにかくイケメンで、
運動神経抜群で頭も良くて、成績は常にトップ。
なのに鼻にかけたりもしなくて、
男女問わず人気なんだ。

そんな彼に恋したのは中学2年生の時。

中学2年生の時に転入してきた私に
優しくしてくれた彼に徐々に惹かれていって、
いつの間にか好きになってたんだ。

あ、でも。
最初は全然違ったんだよ?
今の面影なんか全然なくて。
イケメンだからって調子乗っちゃってる
かなりのプレイボーイ。
しかも、
女なんて遊びだー!とか言ってる最低野郎だったの。

なのに…いつの間にか。

気づいちゃったんだよね。

好きだ、って。


好きだと確信したのは中学3年の時だったけど。
初めて自分から恋したの。

だから、嬉しくて嬉しくて…。

中学3年のバレンタインの日に、
チョコレート渡すついでに想いを伝えようと思ったんだけど、バレンタイン当日はやっぱり女子で溢れてて、
少し遅れて渡したんだよね。

思いきって渡してみたら、
中山くん、凄く嬉しそうに喜んでくれて。
そんな中山くんの笑顔を見られて、
私も幸せな気持ちになれて…。


その場で、思いきって告白して。

どうしても中山くんともっと仲良くなりたくて、
手紙に私のLINEも書いて渡した。

《「もし良ければLINE送って下さい。
無理なら全然いいです!!
私の電話番号は080…。」》 って。

そしたら次の日、
中山くんからチョコレートのお礼メッセージが届いて…
あの日は舞い上がったなぁ。

告白したんだけど…
その答えは…


《ごめんね。告白の返事なんだけど、
相川さんにはもっと良い人がいると思う♪」》

って。

音符まで付けて絵文字まで送ってきたんだよ!?
フるならハッキリ言ってよ!って感じ。

でもきっとそれも彼の優しさなんだなぁ。
って思うと、やっぱ好きだなぁって感じるの。