「あいつを傷つけていいのは俺だけだ」



他の誰かが傷つけるなんて絶対に許さねぇ。



「保険医さん、傷ついてたんですか?」


「傷つかないわけねぇだろ……くそっ」



俺はなんでもっと話を聞かなかったのか。
いま、俺が何を言ってもきっとあいつは聞く耳を持たない。

帰ったら聞いてくれるだろうか。



「副社長、今日の夜は接待ですからね」


「わかってる」



俺の考えを読み取るような北条にムカついた。

しかし、仕事には穴はあけられない。



「ふふ、あたしが出てきたあとに副社長がでてきてびっくりしたでしょうね」


「さぁな。お前は一体なにをしたんだよ。あいつに」


「うーん。ちょっとボタン外して服を乱れさせてみました」


「はぁ!?」



そんなんじゃ勘違いされて当然だろう。
ちとせがあの態度だったのも頷ける。

でも、俺はバカだから。
ちとせがこの状況を勘違いして怒ってることに快感を感じてる。


……俺はあいつが憎いから。
だから、愛して愛して愛して、突き放すんだ。