「ん、作った」


「学くんが!?」



彼が料理を作るなんて思ってもいなくて、驚きの声をあげてしまう。



「お前、失礼すぎ」


「だって……」



お金持ちのボンボンで、ずっと家政婦さんにいろいろしてもらって何も出来ない人だと思っていた。
というか、それが御曹司のイメージ。



「俺の母親がさ」


「うん」


「俺が教育実習やってた当たりで死んだんだ。その前に俺にいろいろレシピを教えてってさ。なんかそれから作るのが当たり前になってたんだよな」


「そうなんだ……」



学くんは懐かしそうに目を細めて話す。
お母さんのことが大好きだったんだろうなってことが見てるだけで伝わってくる。

でも、知らなかった。
あのころ、そんなことがあったなんて。



「もしかして、教育実習を最後までできなかったのって……」


「ん。母さんが危篤になったから」



それなのに、あたしは。
最後までいてくれなくて、約束を守ってもらえなくて。
そんな理由があったなんて思いをせず、憤りを感じたメッセージを学くんくんに送っちゃったね。