「学くん……」



ドアを開けて立っているのは、スーツをスマートに着こなした学くん。

スーツ姿を見るのは、教育実習の初日以来。

私服も、部屋着でさえもオシャレに着こなす学くんだけど。
スーツ姿もちろんかっこよくて思わず見惚れてしまう。



「あいつが好きならすぐにでも親父に言って離婚届に判を押したっていいんだよ」



冷たい言い草に胸の中でちくんとなる。



「だから……あたしは……「離婚ってなんの話？」



いつの間に起きたのだろう。
ぐっすりと寝ていたはずの燿くんがベッド周りのカーテンを開けて立っている。



「燿くん……」


「こいつは俺と結婚したんだよ。な？」


「う、うん……」



本当は燿くんには自分から言いたかった。
あの時1番心配してくれていたのが燿くんだったから。



「……って、副社長！？」



声の主の顔を確認してなかったようで、学くんの顔をみて一瞬にして青ざめる。