「でも、あたしは……んっ」



気づいたら目の前にある整った顔。
ちょっと触れられた唇。

3度目のキスはほかの2回よりも冷たかった。



「俺はちとせのこと好きになることは2度とないよ」


「2度と……?」



それはまるで……。



「あの時、好きだったのはお前も知ってるだろ」



やっぱりあの時のこと。
でも、あの時の学くんの気持ちに嘘はなかった。



「……じゃあ、また」


「ないから。絶対にありえないから」



なんでここまで否定されてしまうのだろう。
だって、学くんは1度でもあたしのことを好きになってくれたのだ。

あの時のあたしたちは、両思いだったのだ。

教育実習生と生徒。
イケないことだけど、たしかにあそこにあたし達の思いはあった。



「なんでそんなに否定するの?」


「ありえないから」


「どうして?」


「はぁ……うるせーマジで。出かける」



壁にかかった上着を手にして、ドアを開ける。