「泣くなよ、笑うところだろ」



すこし乱暴に服の裾であたしの涙を拭う。



「だって……」


「あーもう。ちとせに泣かれると本当にどうしたらいいかわかんなくなる」



もう一度あたしをきつく抱きしめる。



「話の続き、して?」


「じゃあ泣くなよ。お前の涙に俺は弱いんだから」


「泣き止んだよ」



無理やり涙を引っ込めて、鼻をすする。

これは、悲しい涙なんかじゃないんだよ。
学くんと気持ちが通じ会えてたことの嬉しさが溢れた涙だよ。



「お前がどこの大学にいったかも、大学時代に彼氏ができたことも。そいつに浮気されて別れたことも……全部知ってる」


「すご……」



だから、あの時。
彼が浮気をしたことを言ってないのに知ってたんだ。

あの時は、その後に行われる挨拶のせいでそんなこと気にしてもいなかった。



「俺としては、大学に入って付き合った彼氏にかなり嫉妬したけどな」


「ばか。そういう学くんだって……彼女いたじゃん」



──葉菜さん。

彼女のことを思い出すと同時に、出されていなかった婚姻届のことも思い出す。