「あるよ。愛美さんのことちゃんと愛してたよ」


「……ふざけんなよ。ずっと、前の女のこと想ってるくせによく言うよ」


「……学」



俺が知らないと思っていたのだろう。
俺の言葉に親父の目が大きく見開かれる。



「……っ」



こういう目。
ちとせちゃんにそっくりで、脳裏に彼女の顔が浮かんで頭をブンブンと振る。



「それを知ったから、ちとせに手を出そうとしてる?」


「は?」



親父には言ったことはなかったし、プリクラだって見られてないはずだった。



「見たんだ。昨日、二人で歩いているところ」


「そ。いまちとせちゃんの話なんてどうでもいいだろ。こういう時くらい、母さんのことだけ見てやってくれよ」



さっき医者は今日、明日がヤマだと言っていた。
それを超えても目を覚ます保証なんてない。
もしかしたら植物人間かもしれないと。

だから、こいつが母さんのそばにいられるのはこれが最後の可能性もある。