「え!?あ!?え!?」



すぐに離れた唇だけど、ちとせちゃんの柔らかな唇の感触が残ってる。



「唇、柔らかいね」



指で唇をなぞれば、どんどんどんどん頬は赤く染まっていく。



「な、な、なんで!?」


「なんでだろうね?」



椅子に座り直して、元々やるべきだった資料まとめを始める。



「よ、よく普通で……」


「俺は大人だしね」


「……っ」



本当はこうしてからかって、からかい続けて。
最後にズタズタに傷つけたいと思ってた。

でも、向かいに座るちとせちゃんの顔が見れなくて。
資料まとめに没頭したのは言うまでもない。



「あ、あたしは高校生だし。誰かと付き合ったこともないし……簡単にだまされるし」



ホチキスの音だけが響いてた部屋の沈黙を破ったのはちとせちゃん。



「え?何、急に……」



資料から目を離して、ちとせちゃんを見れば彼女の瞳から溢れてくる大粒の涙。



「え!?泣いて……!?」



びっくりして、立ちあがって彼女の隣にいく。