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「親父にとって大事なのは、俺らじゃなくてあっちの家族だろ!」



何度もいったこの言葉。
親父は否定も肯定もしなかった。

母さんもそれをわかっていたし、それに悩んでいた。



「でもね、お母さんはお父さんに一目惚れだったんだよ」



だから、ほかの人を想っていても一緒に入れることが幸せなんだよ。

そんなことを言われたって俺にはわからなかった。



「なに、その写真」



大学3年の頃。
環がリビングで1枚の写真をみていた。

この頃にはもう環には放浪癖があって、家にいる方が珍しかった。



「ちとせの写真」



環がテーブルに置いた写真には、高校の制服を身にまとった女の子がいた。



「あん時の子もう高校生なのか」



俺の脳裏に浮かぶのは、たどたどしい言葉で話す幼い女の子。