「学、ちょっとおいで」



だだっ広いお屋敷。
その中の二階にある俺の部屋。

ドアを開いてお母さんが入ってくる。



「なぁに?」



今日は、お母さんが誰かを連れてくるとおじいちゃんに言っていた。



「学のお父さんを紹介したいの」


「お父さん……?」



俺の父親になるはずだった人は、俺が生まれるまえに交通事故で死亡。
俺にはお父さんというものがいなかった。



「お母さんね、結婚したい人がいるの。お兄ちゃんもできるよ」



お母さんの言葉に、どんな人なんだろう。
お父さんってどんなものだろう。
お兄ちゃんってどんなものだろう。

そう、想像が膨らんだ。



「透(とおる)さん。お待たせしました」



階段を降りて居間のドアを開けて、そう言ったお母さんにソファーから立ち上がる人が見える。



「きみが学くん?」



立ち上がって、まっすぐに俺をみる瞳は優しかった。