「ほんっと、お前って変なやつ」



ぷはっと吹き出す。



「もう、変とが言わないでよ」


「頼むからこのままでいてくれよ。何も知るなよ」



もう一度あたしの頭に触れる。

燿くんの言葉が何を意味するのか。
まだまだ子供なあたしにはわからなかった。



「なんか、あたし燿くんの妹みたいだね」


「あ?妹?俺は妹には手は出さねぇぞ?」


「まって、まだ手出されてないし」



燿くんに向かって、顔の前でブンブンと手を振る。



「まだ?ふーん、これからあるかもしれねぇの?」


「あ!ないない!」



ニヤっと笑う燿くんに焦って、椅子から立ち上がる。



「ぶはっ!嘘だよ!嘘!なんもしねぇから安心しろよ」


「もう、頼むよお兄ちゃん」


「はいはい、妹よ」



燿くんが本当にお兄ちゃんだったらいいのにってずっと思ってきた。
そしたら、どんなに幸せな人生だっただろうか。


燿くんが言う〝知らなくていいこと〟

それをあたしが知るのはもうすぐそこにあるのんて、この時のあたしは知る由もなかった。