「え、じゃあ……」


「お前の父親もアイツだよ」



あたしの言い淀んだ言葉を学くんが代弁する。



「え……?」



頭が追いつかない。
なにから整理したらいいのかわからない。



「俺の母親は俺を未婚で生んでる。そして、お前の父親はうちの会社の社員だったが、お前の母親との離婚が成立したころ……俺のじいちゃんが結婚話を持ちかけたんだ」



ポツリ、ポツリと言葉を紡いでく学くん。



「俺は子供心に父親と兄ができるのが嬉しかった。だが、あいつは……っ!」



学くんがここまで、感情を露わにするのははじめてだったかもしれない。



「お前達ふたりに充分な暮らしをさせて行けるように俺の母親と結婚したんだよ。アイツは母さんのことを愛してなんていなかった!」



学くんの悲痛の叫びはあたしの心に刺さっていく。




「だから……俺は……」



そのまま、学くんは座り込む。



「ごめん、ちとせ……」



そう言ってあたしを抱きしめた。