翌朝。

眠るとか、目が覚めるとか、そういうはっきりとした感覚はないんだけど、ぼうっとしてたらいつの間にか日が明けてたというか。

暗くなったと思ったらいつの間にか明るくなってて、橋を通う車の量が多くなる。

心なしか、ここ数日間で、夜が明けるまでの時間が一番長く感じた。

目を瞑ることもなく、星空を眺めていたからかもしれない。

目を瞑って何も考えなければきっともう少し早く時間が経っていただろうけど、いろいろ考えてしまって。

考えていたのはもちろん、また明日来ると言ったマオのこと。

期待してるわけじゃないけど、暇だから、来てくれたら嬉しいな、なんて。


朝が来ても、マオが来るのはきっと夕方で、それまではまだまだ時間がある。

目を閉じて、風の音とか、電車の音とかを聞きながら、ただ時間がはやく過ぎてしまうのを待っていた。


「…いた」

かすかな声が、聞こえて、目を開いた。

大きく息を吸い込んで吐き出すと、感じられないはずなのに夏の空気の匂いがした。

ゆっくりと声のした方を向けば、昨日とは違ってブレザーを着ていないマオが立っていて。

まっすぐとわたしを見つめながら、こちらへと歩いてくる。

淡い期待をしていたけど、本当に来ると信じていたわけじゃなくて、わたしは彼の姿に少しだけ驚いた。