その日から、彼はカフェに顔を見せるようになった。

その度に、私以外のバイトの子が接客を争うようになっていた。


「雨宮さんは興味ない?彼、ミサキ商事の副社長だよ。」


店長に聞かされた言葉に驚いた。


「えっ?ミサキ商事の副社長?」

「そう、すぐソコの。」

「今まで見かけなかったですよね?」

「今年、新副社長になったらしい。親族から受け継いだカタチみたいだけど。」

「凄い金持ちなんだ。」

「あっ、興味が湧いた?」

「湧きません。ほら、店長、カフェオレ。」

「はいはい。」


店長から聞かされた事実には驚いたが、第一印象が心に残っていた私は彼の接客をする事はなかった。

一人暮らしの私はお小遣い稼ぎの為、週4日はバイトをしていた。

土日は勿論。

平日も2日以上入るようにしていた。

彼は平日だけではなく、休みの日もスーツ姿でカフェに姿を見せるようになった。

余程、このカフェが気に入っているようだ。