翌朝、賢は朝早くから家にやってきた。

まだ用意も終わっていない状態の私は慌てて用意を始めた。

慈英と賢がリビングでコーヒーを飲んでいる姿が目に入る。

何やら話しているみたいだが、仲直りが出来ているみたいで良かった。

そう言えば賢とは喧嘩をしていたような…………。

まあいい。

知らないうちに喧嘩も忘れていた。


「心菜。」

「ん?」


背後から慈英が抱き締めてきた。

顔を首に埋めてくる慈英は甘えている。


「早く帰ってきて。」

「ふふっ、夕食をお願い。」

「うん。掃除は?」

「いい、ゆっくりしてて。」

「心菜、浮気するなよ。」

「しない。同期で出掛けるだけ。」


不安そうな声が聞こえてくる。

背後にいる慈英に振り返って見上げる。

滅多にする事ない私からのキスをしてあげれば、慈英は凄く喜んでくれる。


「慈英、好きだよ。」


この言葉も魔法の言葉だ。

慈英が嬉しそうに私を見下ろしてくる。


「心菜、もう一度。」


目を閉じる慈英に再びキスをした。