彼女の親に挨拶とか経験ありそうだが、ないのか?


「俺も初めてで緊張する。けど、この機会に同棲の話もしたいから。」

「えっ?」

「心菜、親の許可が出ればオーケーなんだろ。なら、俺が交渉するから。」

「えっ?えええええ?」

「煩い。兎に角、迎えにいく。」


強引に決まってしまいそうだ。

親に何て言うの?


「いやいや、付き合って日も短いし。」

「関係ない。俺は一緒にいたい。ただそれだけ。」

「一緒にって。私は同棲の経験とかないし。」

「俺もない。」

「嘘。」


つい言葉に出ていた。

そんなのは嘘だ。

簡単に同棲とか言ってくる時点で経験ありそうだ。


「誤解してるみたいだけど。彼女はいたけど、同棲とかはしてない。」

「嘘。」

「嘘じゃない。兎に角、迎えにいく。」


これは決定事項みたいだ。

本当に迎えに来るつもりか?

親に紹介するのか?


「遅いから切るけど、明日はバイト?」

「いえ。」

「…………絶対に許可は貰う。心菜、おやすみ。」

「おやすみなさい。」


携帯を切った。

そんなに一緒に暮らしたいのか?

慈英の熱意は伝わってくるが、親に紹介ってどうすればいいのか。

悩ましい帰省が目前に迫っていた。