手を繋いでフロントに向かう。


「慈英、年度末は忙しいでしょ?」

「忙しいが、時間は作るから大丈夫?」

「やれる事は私がやるよ?」

「心菜に負担を掛けると思うが頼む。」

「負担じゃないよ。私と慈英の結婚式だよ。」


そうだ。

2人の結婚式なんだ。

慈英が忙しいなら私が補えばいい。

半年後には結婚式を挙げる。

式場も決まり、一気に前に進んだ気がする。


「結婚式。」

「ん?」

「今日、色々と話を聞いて『慈英と結婚するんだ』って改めて自覚した。」

「俺も『心菜と結婚出来るんだ』って思った。」

「残り半年だね。」

「言っとくが、入籍は四月だから。」

「うん。でも結婚式は特別じゃない?」

「そうだな。」


フロントで清算した慈英とマンションへ帰る。

タクシーの中でも手は繋がれたままだ。


『ずっと一緒に生きていくパートナー』


なんだと改めて思った。


「慈英、これからも宜しくね。」

「ははっ、急にどうした?」

「なんとなく伝えたくなった。」

「こちらこそ。」


繋がれた手を持ち上げられ、慈英に視線を向けた。


「心菜、これからも宜しく。」


私の台詞を笑った癖に、同じ言葉を返す慈英に笑いが込み上げてくる。


「ふふっ、こちらこそ。」


私も同じ言葉で返した。