いよいよ当日だ。

課長と二人で会場に乗り込む。

それぐらいの気合いを入れて臨んだ。

理由はずっと頑張ってきた仕事だし、今日は慈英にお願いされてもいるからだ。


「今日で終わりだ。」

「はい、課長、ありがとうございました。」

「連日の疲れは年末にゆっくり休んで。」

「はい。」


すっかり出来上がっている会場だが、ホテルの人達が慌ただしく仕上げを確認している。

料理に関しては今がピークの様子だ。


「副社長から頼まれてるよ。今日は婚約者として借りたいと。」

「…………聞いたんですね。」

「雨宮は知らないだろうが、残業で遅くなる日は俺に頼むんだ。」

「何をですか?」

「雨宮が帰るまで一緒にいてくれって。」


そんなお願いをしていたのか?

確かに、残業の日は必ず私よりも遅くまで課長は残っていた。

それはただ仕事が忙しいからだと思っていたが。


「それに副社長に就任したばかりの頃は妹の岬を怒らせていた。原因は後で知ったがね。」

「それって…………。」

「雨宮に会いに通ってたらしいね。仕事が遅くなるから岬は怒ってたけどね。」


まさかの新事実に驚きが隠せない。

週に何度も通えば、秘書として怒るの分かる気がする。