ふと疑問が浮かんだ。

恵さんと武内さんは恋人同士の筈だ。それは武内さんが話していた。

恵さんをちらりと見る。

私よりは確実に上だ。

慈英が31だし、恵さんも結婚を考える年頃だろうが聞かない。

聞かないだけで進んでいるのだろうか?

今度は武内さんを見る。

慈英ぐらい?


「さっきから…………どうしたの?」

「えっ?」

「挙動不審だよ。」

「えっ?そんな筈は。」

「あるよ。何?」

「何でもないです。」


呆れた視線が向けられる。

前の2人もちらちらと見てくる。


「あっ、ここにします?」


話題を切り替えた。


「この店は会社の人に会うよ?」

「うっ。」


恵さんにばっさりと切られた。


「あっ、副社長だよ。」

「あの子でしょ。」


ふと振り返れば女子社員だ。

私達を少し離れた場所から見ている。


「一年目らしいよ。」

「もう結婚?知り合ってすぐ?」


そんな声が聞こえてくる。

社員は馴れ初めとか知らないから、勝手に妄想が一人歩きしてしまうのだろう。