隣を歩く武内さんに軽く頭を下げて謝る。


「武内さん、忙しい所をすみません。」

「ん?俺も用があったから気にしないで。」

「でも…………ご迷惑を。」

「んー、迷惑とか思わなくて大丈夫。俺さ、こう見えて野心家なんだ。」

「野心家?」


武内さんを見上げれば、一瞬だけ目が合ったが…………直ぐに逸らされてしまった。

不思議に思って、じっと横目で武内さんを見つめていれば、足を止めた武内さんに私も足を止めた。


「雨宮には味方になって欲しくて。」

「味方?」

「この先、俺の味方になって欲しくて恩を売ってる訳。」


意味が理解できない。

恩を売る?


「兎に角、その内に分かるから。今は利用されてると思って…………感謝しないで。」


再び歩き始めた武内さんに急ぎ足で追いつく。


「俺、そんなにいい人じゃないから。」

「…………。」


武内さんの言葉は理解できない。

でも私が岬の嫁になる事に関係しているのは理解できた。

それは多分ミサキ商事とも関係している。

そう思わざるを得ない。