やっぱり騒がれている。

何から話せば良いのか…………。


「仕事の時間よ。朝の報告に行きなさい。」


助け船である恵さんの声だ。

隣には武内さんと課長も立っている。


「婚約の話はプライベートで聞きなさい。勿論、副社長も交えてなら許可する。」

「一つだけ。副社長からの猛アタックで結婚する事を覚えておいて。」


課長と武内さんのフォローに女子社員が自席に戻っていく。


「しばらくの間は一人で出歩くの禁止。」

「恵さん。」

「声を掛けて。」

「すみません。」


私も自分の席に座り、今日の仕事に取り掛かる。

予想はしていたが疲れそうだ。

それでも陰で言われないだけマシか。

社報の配布で副社長との婚約は知れ渡った。

メールを確認すれば、何通か婚約話のメールを受信した。

でも悪口とかではない。


『同期で結婚祝いするぞ!』


同期からのメールだ。


『副社長との話を聞きたい!』


これも同期だ。

ほっと胸を撫で下ろした。

悪口を言われるんじゃないかと危惧していたから。


「大丈夫?」


隣に座る恵さんが心配そうに声を掛けてくれた。

そんな恵さんに微笑んでみせた。


「はい、大丈夫です。朝の報告に行きます。」

「一緒に。」


恵さんも立ち上がる。

今日から社内が騒がしくなる予感だ。