出逢って2年半近くになっていた。そして付き合って2年になる。

私達は前に進もうとしている。

婚約指輪を見つめる。


「結婚。」

「ああ。」

「なんか実感が湧いてきた。」

「そうだな。」


目に映る指輪が現実を知らせている。


「心菜、俺らは若くないか?」


賢の言葉に頷く。

確かに若い。


「後悔しない?」

「しない。」


即答できる。

後悔なんてしない。

それぐらい慈英を好きになっているし、こんな恋は2度とないとも思える。


「しないよ、後悔なんて。」


はっきりと言葉にしていた。


「そっか。なら応援する。」

「うん、ありがとう。」


賢と目が合う。

途端に背後から目を塞がれてしまった。


「俺の嫁だから。」

「婚約者だろ。」

「嫁だ。」


仲良し兄弟が言い合いを始めた。

いつもの雰囲気に戻っていく。


「なんか家にいるみたい。」


ふと漏れた言葉。

日本の家にいる時と変わらない。


「賢、帰れ。」

「何で?」

「二人で夏休みを過ごしたい。賢も分かるだろ?」

「今更。心菜、手料理を食べたい。」

「家政婦じゃない。サラに頼め。」

「あー、夏休みも終わるな。」


しみじみと賢が呟いた。

もう夏休みは終わる。

私も大きな溜め息を漏らした。


「俺は会社でも一緒にいれるけどな。」


慈英の言葉に賢が反応する。


「公私混同は反対。」

「してない。第二秘書が必要だっただけだ。」

「心菜じゃなくてもいいだろ。」

「それは人事に言え。」

「本当かよ。兄貴が決めたんだろ。」


賢に頷く。

私も恵さんも思っている。


「内緒だ。」


それが答えだ。

また会社での日常が始まる。

それが平穏な日々である事を祈って…………。