二人で過ごす夏休み。

二人だけで甘い日々を過ごす事はなかった。なぜなら…………。


「心菜、婚約指輪か?」

「うん。」

「目立つぞ。」

「…………。」


隣に座るのは賢だ。

あれだけ慈英に断られた筈なのに遊びに来ている。

それも次の日に。


「本当に結婚するんだな。」

「うん。」

「あんな兄貴でいいのか?」

「おい、賢。」


賢と反対側に座る慈英が賢を睨む。

只でさえ、賢が来た日には機嫌が最悪になっていた。


「夜は自分の部屋で寝るし。絶対に覗かないから。」


賢の変態とも言える発言。


「耳栓しとけ。」


それに答える慈英も…………どうかしている。

なんだかんだと賢には甘い。

末っ子の特権なのかもしれない。

そんな私達は一緒に過ごしていた。


「兄貴、この指輪は目立つぞ。」

「別にいい。近々発表する。」

「大丈夫かよ。」

「ちゃんと守ってやる。」

「ふーん。俺も家族になるし、守ってやるけどな。」


何故か少し賢は不貞腐れ気味だ。

隣に座る慈英の指が指輪を撫でる。


「心菜、ちゃんと守ってやるから。」

「うん。」


私の覚悟も決まった。