五限目が終わり、今は十分間の休憩時間。

「日陰で休もう」となって、テニスコートから少し離れた木の影に腰を下ろした。

「ふぃー、つっかれたー!」

彼女は体操着の襟元をぱたぱたと仰いで、首に掛けたタオルで汗を拭いた。

「宮ちゃん大活躍だったね。流石、テニス部部長さん」

「由李もナイスキャッチだったよ、さっきの!」

お茶を飲みながら、目の前のグラウンドを眺める。

休憩中だというのに、男の子達は大半がサッカーをし続けている。

ルールはよく知らないけれど、普通科も特進科も混ざり合って、皆楽しそうにボールを追いかけている。

その中に彼の姿を探してしまうのは、もう癖になりつつある。

しかし、どんなに見回しても彼はいなかった。どこかで休憩しているのだろう。

落胆して小さく肩を落としたとき、隣に座った彼女は突拍子もなく「嬉しいよ」と笑った。

「え?」

「男性恐怖症の由李が、恋をするなんて。普通科っていうのは心配だけどね」

わざと拗ねたように頬を膨らませる彼女が可愛くて、その優しさに頬が緩む。

「ありがとう、宮ちゃん。でも、相良君は優しいよ」

いつものように言い返すと、彼女は一旦何かを考えたように動きを止めて、そしてゆったりと口を開いた。

「まぁ、あいつのーー」

「やだー、あれ見てぇ」

背後から、くすくすと笑う声が聞こえて、彼女の言葉が途切れた。

明らかに嘲笑を含む声に、怖々と振り向くと、そこには普通科の女の子達がいた。

髪の色を金や茶色に染めていて、派手なお化粧もして。

宮ちゃんとはまた違った雰囲気だけど、とても可愛い人達だ。

(……全部、校則違反だけど)