白馬に乗った上司様!?

確かに中村さんの日頃の行動や仕事への態度は褒められたものじゃないのは理解できる。正直、私だって不快な気持ちになる事もある。

「いや、中村さんの態度や行動がどうって事じゃなくて。俺の言い草、酷かったなって」

「それは‥‥。でも、それも私が声を荒らげる事ではなかったです。すみません」

中村さんと同じく課長に憧れているからこそ、課長への好意を否定的な言葉で語られる事が耐えられなかった。でもそれは私の個人的な問題で課長に責任はない。

「いや、やっぱり言い過ぎたよ。ぶっちゃけ言うとさ、営業部に来てからの一年、俺は自分の価値みたいなものに戸惑ってるんだ」

「価値、ですか?」

「そう、三十過ぎてそんな事で悩むなんておかしいだろ?でもさ、技術部にいた時は俺、普通だったんだよ。職場でも女性に騒がれる事はなかったし、仕事で褒められる事はあってもそんなの他の奴らと変わりなくて」

吹っ切れたのか、課長の自嘲気味な言葉は溢れるように続いていく。

「それがさ、社長に褒められて営業に来た途端に一変して。変だろ?だって俺自身は何にも変わってないのに、未来の重役だとか言って、口を聞いた事もない奴に嫌われたり、好かれたり」