ほんもの。


なんて、思っていたのも束の間。

カットソーの中に手が入る。手が冷たい。

「冷たい、ちょっと、安藤聞いてる!?」

「聞こえねえな」

耳を食まれた。ひゃ、と声が漏れる。これは本当に逃げないとやばい、と床と安藤の間で身体を反転させようとした。そして後悔。
敵に背中を向けてはいけなかったのだ。

中途半端に転がった私の服の中に安藤の手が入る。前に回されて、後ろから抱きしめられる格好になった。

項に、安藤が顔を埋めているのが分かる。

「……月白」

その声が熱い。するするとなぞるその手を服の上から捕まえる。