それでも、私は安藤の全てを知っているわけでもないし。
安藤が私の全てを知っているわけではない。

「いや、個人的興味」

「なにそれ」

「他人のものに手出すほど、欲しいって思うのか?」

他人のもの、独占欲。
欲しい、支配欲。

コーヒーを飲む安藤には、そんなものが備わっているようには思えない。
受付嬢の皆川さんもあっさり振ったという話だし。

「寧ろ、それが無くて付き合うってできる?」

「質問を質問で返すなよ」

「安藤は無さそうだね。他人を何からも奪いたいって気持ちになったこと」