ご馳走さまです、とだけ言って店を出た。

ワインの一口くらい飲めば良かった。

夜だったけれど、電車に乗ったら目立つ。何より自分がこの香りに耐えられない。
そこで、この近くに安藤の家があったことを思い出す。

よし、突撃だ。




「……で、来たのか」

「ん」

安藤が貸してくれたTシャツと無事だったスカートを履いて脱衣所から出ると、良い香りにつられてキッチンの方へ向かった。

「安藤って料理上手いんだね」

「板前志望だったから」

実家が旅館であることの影響だろうか。それにしてもこのぶり大根美味しい。