「はい」
答えた途端に、その笑顔がすっと引く。その様が怖くて、ぞくりとした。
いや、いつかこんな日が来ることは分かっていた。
パシャ、と三島さん用に注がれたワインの中身が私に向かって飛んできた。
三島さんの奥さんがそれをぶちまけたのだった。
目に入って、滲みる。白だったら洋服のシミも目立たなかったのにな、と冷静に思う自分がいた。
「もう、彼とは会わないでもらえる?」
彼女も極めて冷静に声を発した。
「そうするつもりです」
「……本当に?」
「どうしてそんなこと聞くんですか?」
私達のやりとりを見ていた周りのお客さんからの視線が痛い。