「はいはい、知ってますよ。安藤が料理上手なことくらい。私の部屋には一生キッチン用具がないままですよ」
「そう言いたいわけじゃなくて。俺の家にはない土鍋が十和子の部屋にはあんだろ」
「うん、土鍋ある。この家にあったのを勝手に送られただけだけど」
「だろうな」
変なフォローを入れたのが悪かったらしい。
十和子は腕を組んで口を開く。
「大体においてね、料理しなくても生きていける世の中なんだから。私が料理できないのは世の中の所為と言っても過言じゃない」
「できないことを世の中の所為にし始めたら終わりだぞ」



