家に何かいるのか、それとも誰かいるのか。
あらゆる可能性が頭の中を駆け巡った。

「キッチン用具が全然なくて……」

言いにくそうに紡がれた言葉に、昔のお笑いのようにずっこけてしまいそうになる。

「ああ、そうですか」

「反応が薄い」

「いや、今まで言及はしなかったけど。十和子さん、全然料理できないだろ」

ちょっと悲しそうな顔をする。

「……その通りです」

「いや別に良いけど、料理できなくても。俺ができるから」

十和子は眉を寄せてこちらを見た。何が思うことがあるらしい。