全然無口じゃないし、全然無表情じゃない。

「安藤はアルバイト何してたの?」

「派遣とか、飲食店」

「モテたでしょう。安藤が居るからって来るお客さん沢山いそう」

「いたけど、大体既婚者」

ふ、と思わず笑う。いや、これは笑うところだったのか。

膝を抱いて、目を少し閉じた。

「こちらこそ、ありがとう」

急に発された言葉に目を開く。

「……何のお返し?」

「俺と居てくれて」

安藤が本棚からこちらに視線を向けた。

「私ね、ずっと考えてたんだけど」