ほんもの。


不満はないですけどね、別に。

「お久しぶりです、失礼します」

「寒いから挨拶は中に入ってからで良いわよ」

急かされて家の中へ入る。安藤もペースを乱されているらしく、微妙に顔に緊張が見られる。

リビングへ行くと、父親がソファーに座っていた。
私も久しぶりに会った気がする。

「初めまして、お邪魔してます。安藤泉です」

「聞いてます。十和子と同じ会社なんですよね」

父がそう言ったことに珍しさを感じてしまった。

私たちを揃ってみる相手は、だいたい見合いを最初に口にする。

「はい、十和子さんの経理部にはいつもお世話になっています」