ほんもの。


安藤家って多忙だな……。

閉まった扉を見て思う。後ろで安藤が窓際の椅子に座った。

「すごいね、空けといてくれたのかな?」

「なんじゃね? この時期、満室なのかどうか知らねえけど」

「安藤、なんでここに泊まるの嫌なの?」

「落ち着かないから」

こちらを見て、とんとんと安藤が肘掛けを叩く。こっちに来いという意味らしい。

近づくと、手首を掴まれた。ぐいっと引っ張られて安藤の膝に着地する。

これはまずいと足に力を入れるけれど、横腹を掴まれて掻き抱かれて、安藤と距離が近付く。

わたしが紙だったら、ぐちゃぐちゃになってる。