ほんもの。


……待って。ちょっと、待って。

「でか」

「そうでもないだろ」

安藤は旅館の息子だった。しかも、なんか想像してたのより遥かに大きい。

茅野旅館ってそんなに聞かないから、家族経営のこぢんまりした旅館かなとか思ってたけど全然違う。普通に高級旅館だ。

「え、しかも家じゃないの? 旅館なの?」

行くぞと手を引っ張られて、ふとした疑問。

「みんな働いてる」

「あ、そっか」

手土産にと持ったクッキーが浮かれて見える。お歳暮とか醤油、油レベルじゃなさそう。

「あらあらあら!」

綺麗な玄関に足を踏み入れると、着物を着た安藤母が出迎えてくれた。