ほんもの。


ぐずぐずと泣き出した私に、安藤がぎょっとする。

「なんで泣くんだよ」

枕元にあったティッシュを取って頬に当ててくれる。本当に面倒見が良い。

「む、むかしの話なんだけど」

「ん」

「高校のとき、初めて付き合った人に帰り際に『大事にしてね』って言ったら、『何を?』って返されたことがあって」

今思えば、高校生なんだから、そんな目的語のない言葉を投げられても困るだろう。

それでも、私は通じると信じて疑わなかった。

保障はどこにもない。でも、安藤には通じた。

「そいつ、そんなに月白のこと好きじゃなかったんじゃね?」

「酷い」