それを言った経緯を、ちゃんと覚えている。
玄関で安藤に押し倒されたときだ。

「言ったけど……」

「俺、顔以外に良いのって頭と家柄くらいしかない」

「それくらいあれば十分なのでは……」

私にはないものだし、世の中の大半の人が欲しいものだろう。

「月白に好かれないなら、意味ねえよ」

そう言われて、この体制で良かったと思った。

なんか恥ずかしくて、そして嬉しくて、にやける。

分かりにくい愛情表現。いや、それも私は人のことを言えない。

「好きだよ、安藤のこと」

中学生みたいな言葉が口から出た。
その首に腕をまわす。