『十和子、明日こっち来れる? お祖母ちゃん家から良いお菓子が届いたのよ』

「あ、うん。昼くらいに行く」

『お昼高いところに連れてってあげるから早めにねー』

実家の母からの電話に、頭の中にあったアンテナがピンと立った。良いお菓子、高いところでお昼。

そんな甘い言葉に乗せられたのが運の尽き。

そんなに離れていない実家へ電車で向かい、鍵を開ける勝手知ったる親の家。リビングのテーブルに乗っている有名洋菓子店のラスクを見て喜んだのもつかの間。

「十和子に似合いそうなワンピース買ったのよ」

母が高そうなワンピースを持ってきた。