「もうっ!何があったかは知らないけど暴力反対!」

「す、すまない………」



へ?
若が謝った?


「ほらっ!三浦さんにも!」

「悪かったな……」

「あ、いえ?」

「大丈夫ですか?」


ふわっといい薫りがしたかと思うと、川口麗が掴まれていた胸元を整えてくれた

ひやっと、若から絶対零度の空気が漂ってくる


「あ、大丈夫です!川口麗さん!」


川口麗は驚いたように目を見開いて、ぷはっと


笑った


か、可愛い
きゅっと、心臓が掴まれていた



「なんで、フルネーム?」

「あ、」


可愛い笑顔にあたふたしてしまう
いやいや、川口麗は竜さんの女だ

確かに美人だ
でも、それとこれとは話が別だ


「麗で良いですよ、三浦さん!」

「あ、え?俺の名前………」

「えー、この前一緒に稽古したじゃないですか!
忘れちゃいました?」


ぶんぶんと必死で首を横に振る
忘れるどころか今も若に話してたところだ
でも、たった一回で名前覚えてくれたのか?


"ちょっと、そこのあんた"
そう呼んでいた若の元カノを思い出す
若の彼女が麗さんみたいな人なら良いのに、と少しだけ思った


「麗……どうした?」

「光輝さんに頼んで連れてきてもらったの
ダメだった?」


麗さんが申し訳なさそうに呟けば、若は慌てたように"そんな事ない"とポンと頭を撫でた
うわっ!