「おめでと。」


そう、声をかければ、不思議そうに私を見つめる彼。


「成功、したんでしょ?」


自分で言いたくない。
でも、褒めてあげたくて。

私は私の気持ちを殺して、蓋をした。
感じ取らないように。


幼馴染って言葉が、結弦は"私のもの"って私を勘違いさせていた、と言い訳をつぶやく。
もちろん、心の中で。


『俺のこと、春から好きだったんだって。』


嬉しそうに話す彼に、心の中でツッコミを入れる。

私は10年以上ずっとだよ、って。
ずっとあなたしか見ていなかったよ、って。


届くはずのない心の声は、逆に私に現実を見せる。


『春からかぁ。長いことまたせたなぁ。
でもま、迎えにいむてあげたし良しとするか。』


ああそうか。
結局、好きでいた時間なんて関係ないんだ。

どんなに長い間、彼のことが好きでもあれが迎えに行った相手は私ではない。
彼の中の姫には、叶わない。


"相手に伝えなきゃ、意味がない"。
殺した気持ちが、命を吹き替えした。