「……栞里?」 「タクシーは、ちょっと…」 あの日も、タクシーだったから。 足がすくんでしまって、早くお婆ちゃんのところに行きたいのに乗り込むことができない。 「大丈夫。俺がいる」 ぎゅっと繋がれた手に力がこもったのは、そんな時。 「お婆さんは軽症だって。意識もあるし、いなくなったりしない。怖くないから、大丈夫」 どうして蒼くんは、こうも私を安心させてくれるんだろう。 ………そういえば私、蒼くんに何も話してない。