「花香のほうがよっぽど馬鹿だし。」


この声。振り返らなくてもわかる。絶対に大毅だ。
唯一私のことはなんでも知ってる……と言っても過言でないくらい、私を知ってる。

大毅は当たり前のように私の隣に腰を下ろした。


「なんでそんなこと言うのー。」


私が少し声を荒らげるとふふ、と笑う大毅。
そして、そういうところ、と言いながら私のおでこを突く。


「いったぁ、何すんのよ!」

「その言い方が周りは怖いんだって。」


さっきまで笑ってたくせに、急に心配した顔しちゃってさ。


「眉間にシワ寄ってんで。」


しかめっ面とも、笑いをこらえてるとも言えない、変な顔で私の顔を見る。
つい笑ってしまって、にらっめっこしてたわけでもないのになんだか悔しい。



「でもなぁ、実はわかりやすいんやけどね、花香って。」

「花香って名前なのに、こんなきつい顔でさー。[名前負け]もいいとこだよ、ほんと。」

「全然、俺の話聞いとらんな。。」



大毅がため息をつく。
でも私が大毅の話を聞いてないってよりかは、大毅が、私の話を聞いてないんだと思うの。


「あと3分でチャイムなるよー。」

「戻らへんの?」

「もどらなーい。」