「今回はいつもとは、ちょっと違いまして。厄介なお客なんですよ」
「と、いうと?」
斗春は所長のイスにかなり深く沈むように座ったまま、興味を示したらしく、やっと目を開けた。
対して荒改の口から出たのは馬鹿げた言葉だった。
「『恋するオトメ戦隊』って知ってます?」
なにかのヒーローものだろうか。
微妙に売れ始めたアイドルがやる深夜ドラマのようなタイトルだ。
「知らん」
斗春も、さっそく興味を失ったらしく、冷たく言い放ち帰れオーラを出し始めた。
「そうですか、裏では結構有名人なんですけどね。 簡単に言うと、
『スピーディー・レッド』
『ロストロス・グリーン』
『エタニティ・ブルー』
『カットキャット・イエロー』
『ポイゾネス・ピンク』
などで構成される恋愛犯罪集団です」
頭が痛くなる。
バカな犯罪者が、
バカみたいな徒党を組み、
バカとしか思えない行動をしている。
バカの集団だ。
そうとしか言えない。
そりゃ、有名にもなる。
なんだ恋愛犯罪って。
聞いたことないぞ。
そんなジャンル存在してたのか。
「やつは、盗んでいきました。あなたのハートをね」的なやつでしょ、どうせ。
まだブラックとかシルバーとか出てくるんでしょ。
と内心で、おおいに小バカにする。
「・・・・・・。」
「そ、それで? その人たちがどうしたんです?」
斗春が反応をする気すらなくなっているので、代わりに相づちを打つ。
ちょっとしたボランティア気分。
まさか金の敬虔な信者である私が無料奉仕活動する側に立つ日が来るなんて、世も末だ。
「えぇ、何の因果か、」
荒改は、心底面倒臭そうに(お前のとこの顧客だろうが)吐き出す。
「ソイツらが全員この街に集まったらしいんです」