「じゃあ、莉子の退職を祝して」

「乾杯」

お互いのグラスを掲げる。シャンパーニュの中で星みたいに煌めく小さな泡が踊った。

「もうすぐ、出会ってから一週間だ」

「まだ一週間……」

「きみに会えて良かった」

もっと長い時間が経っているような気がしてたけど、まだ一週間なんだ。

既に誰もが振り向いて見るようなレヴィの王子顔が、自分の傍にあって当たり前のような感覚になっていることに驚く。

「私も」

レヴィのおかげですぐ退職できて本当に助かった。会社での逆風は、予想以上だったもの。

アミューズ、オードブル、スープと、順番に料理が運ばれてくる。それらは繊細で美しく、全部写真に撮ってSNSに上げたいくらい。

ああ、せっかくフォトジェニックな料理なのに……。周りでそんなことをしている客は他におらず、私は携帯を出すことをこっそり諦める。レヴィに恥をかかせちゃいけない。

きっとみんな、こういう料理を食べ慣れている人たちなんだ。わざわざ写真に撮って見せびらかしたいなんて思うの、庶民だからこその感覚なのかも。

「美味しい?」

「うん、もちろん。本当に美味しい」