──二時間後。

「えええええ……」

レヴィの助手席の乗った私は、とある高級ホテルの一室に連れ込まれた。そこで待っていたのは、スタイリストと思われる三人の男女。

すでに用意されていたイブニングドレスを着せられ、メイクをし、くたびれていた巻き髪を編み込まれ、スプレーを吹き付けられる。

呆然としている間に大変身させられた私は、椅子に座ったまま鏡をのぞき込む。

他人に全部任せて綺麗にしてもらったの、成人式以来だわ。

スタイリストさんたちは、作業が済むと一通りお世辞を言い、さっさと帰っていった。

「綺麗だよ、莉子。さあ行こう」

レヴィはいつも私に「綺麗」とか「可愛い」と言ってくれる。そのたびに嬉しくなるのだけど。

「行くって、どこへ?」

「食事だよ。決まっているだろ」

スーツのままのレヴィがにこりと微笑んで手を差し出す。こういうとこ、ほんと王子様だよね。

「私のために、あの人たちを呼んでおいてくれたの?」

「そうだよ。今日は特別な日だから」

レヴィの手を借りて立ち上がった私の額に、羽根のように軽いキスが降ってきた。

「今までお疲れさま。よく頑張ったね」