「レヴィ、私が言うのも何だけど、ご両親に挨拶はしておいた方がいいんじゃない? うちの両親は後回しでいいから」

にらみあう二人が、私の方を意外そうな顔で見た。

「結婚って、本人だけの問題じゃないでしょ。家どうしの付き合いは避けて通れないものよ」

「ああ莉子。きみって、意外に常識があることを言うんだね」

顔をほころばせて、喜んだように両手を広げるレヴィ。

意外って何よ。私は本来、常識的な人間なんだから。お酒を飲んで前後不覚になったのなんて、昨夜が初めて。もちろん、会ってすぐ結婚を決めてしまったことも。

「会ってくれるかい? 僕の父に」

「もちろん」

浅丘グループの会長なんて、そうそう会えるものじゃない。さすがに緊張はするけど、そこは人として外せない。

本来なら、婚姻届けを出す前にうちの両親に彼も合わせたいけど、ひとまず後回し。うちの両親は娘(私だ)をもらってくれるなら誰でもいいと思っているみたいだし、反対はしないだろう。

「……いいでしょう。理事長が反対しなければ、私もこれ以上何も申しますまい」

武将のようなしゃべり方の神藤さんはまた私をにらみ、会長のアポを取ってくると言って部屋を出ていった。